Short Story【苦痛】〜麻友子と瑠美〜 ②

事務所へ戻る麻友子の足取りは重かった。一歩一歩前に出す太腿は、瑠美の数々の言霊の負荷を押し避けながらやっと歩いているかの様に重かった。

とにかく佑志と連絡を取りたい。かなう事なら会いたかった。彼を取り巻く状況を、彼の考えている事を…何とか掴みたかった。
そしてもう一つ。父親・達郎にこの事を自分は言えるのか?

突如、麻友子の心に、まるで不動のテトラポッドの様に瑠美が現れた。
何か手はないか?許してはもらえないか?父親に言うか?様々な思いが高い荒波となって打ちつけても、それはけして揺るぎない不動のテトラポッド。

腕時計を覗く。左手首にさり気ない輝きと、高貴な品格で存在を示すパテック・フィリップは、自分が走り続けてきた証だ。
「私を守りなさい」
時計はそう語りかけてる様に思えた。積み上げてきた地位と栄誉、信頼、情熱。その象徴が語りかけている様に。
然程の時間が経っていない事に気付く。カフェで瑠美といた時間から。長い時間が流れた感覚があるが、思考が停止と激しい渦巻きを繰り返し、事務所へ戻ってきた。

「おかえりなさい」

麻友子の帰りを待つ加藤は、明らかな困惑の表情を浮かべている。麻友子は何事も無かった様に振る舞おうとしたが、ただいまと一言返すだけだった。

「社長、先程の川崎電設さんの経緯ですが、何故突然こんな形になったのか、説明してもらっていいですか?本当に僕、訳がわからなくて」

加藤は「新」の冠は取って切り出した。用件に徹する態勢でいる。

「先方は?渡邉さんは何も言ってくれなかったの?」

探りの質問返しをした。彼の持つ心配、もしかすると疑念を抱いているかもしれない。まずはそれらを払拭しようと防衛本能に従った。

「渡邉さんも突然の伝達で、詳しくは聞いてないそうなんですよ。奥様が今度は社長さんに入れ替わるんですってね。社長は何を聞いてきましたか?」

「そう…何でもね、今日は奥様が社長になる手続きにこれから取り掛かるみたいで…立て込んでそうだから今日は別れてきたの」

それは何の取り繕いにも、場つなぎにもならない答えだった。加藤は苛立ちを示しながら再び質問で追ってきた。

「そりゃそうでしょうよ。急にそんな事になったなら、いくら家族経営の中小企業でも会社の中は大騒ぎじゃないですか?異例ですよ。こんな事は。何の話し合いだったんですか?」

「あちらの内部の詳しい事はわからないわ。ただ加藤君に対しては、ほら、まだ現場研修の最中じゃない?若き会計士の卵に経験を積ませたいとね、奥さんは寛大だったわよ」

咄嗟に出た嘘だった。後には引けなかった。
こうして自分はますます嘘に嘘で塗り固めてゆくのだろうか。同時に、加藤も既に真実を知っているのかと疑念と恐怖の小さな火が灯された。

「そうかなぁ…川崎さん、自分トコの業績不振の改善で目一杯だろうに、そんな事考えてる余裕あるのかなぁ…」

加藤の相変わらずの鋭さに麻友子も内心、唸った。ただの無邪気で脳天気なだけではないと身構えて続けた。

「真意はわからないわ。ただ、先方はそう仰ってるのだから、好意は甘えておいたら?」

なるべく平常を装ってはいるが、どこか歯切れの悪さは残ってなかったか、一言一言を慎重に振り返っている。神経を擦り減らし、どっと疲労が襲ってくる。

「父は?もう戻ってる?」

話題を変えた。変えた所で、どの話題も逃げ場など無い事に気付いた。
「お父様に相談なさい」
瑠美の言葉がフラッシュバックする。

「お戻りになられてから、またどちらかへ出かけられましたよ。行き先は僕は聞いてませんが、事務の横沢さんが聞いてるんじゃないですかね?」

「そう…ちょっと話したい事があったんだけど、それなら仕方ないわね。じゃぁ早速、川崎電設の経過の引き継ぎでもする?」

「社長、今日は勘弁して下さいよ。こちらも今日こなそうとしてた案件は山積みなんですから。その資料は再度、社長の方でも整理しておいて頂けませんか?明日、お願いしたいです」

「オッケー、わかった。ではそちらに今日のとこは集中しておいて」

加藤に顔も向けずにそう言うも、加藤が肩をすくめて自分のデスクへ戻る仕草は感じ取った。
急場を凌ぎ安心している事を、麻友子は心中、痛感している。
達郎も不在、加藤と精神的駆け引きをする様な対峙も終わり、残されたタイムリミットは3日。時間がない…椅子に腰を降ろし、机上の書類をまとめた。この中にでも、打てる手があったなら…

その時だった。事務の横沢が入室してきた。
「あの…社長…」

「はい?どうしたの?」

麻友子は書類に顔を向けたまま、声だけを横沢に投げた。

「郵便配達員さんが、内容証明郵便が届いてるとお待ちですが…」

内容証明?胸が高鳴った。 
加藤にも聞こえた筈だった。確実に相手に手渡しした完了確認を、差出人、郵便局共に共有する郵便である。
長期売掛客への再三に渡る請求書送付や、裁判所からの呼び出しなどで用いられるが、職業柄、クライアントの企業より重要機密書類を会計士の元へ送る際にも時折使われる。
まさか…。麻友子の脳裏をかすめたのは、達郎宛に先程の写真を瑠美が送りつけたのでは?、という疑念だった。
加藤は気にも止めずにデスクワークを続けているが、

しかし今の麻友子にとっては、このタイミングで内容証明郵便が届くなど動揺を電流に変えて全身に巡らせる材料でしかない。
瑠美が薔薇の花束を持って立っている妄想が浮かんだ。その刺持つ茎が伸びてきて麻友子の体に巻き付いてくる。
事務所の玄関で郵便を受け取る手に、汗が滲んでいる事にその時初めて気付いた。
差出人を見ると、それは別のクライアントからの重要書類だった。冷静に考えれば佑志とホテルの外での場面を撮影されたのは、つい二日前の土曜日だ。
瑠美にしても、今日すぐに内容証明の郵便で到着させる時間の余裕はある筈がない。

これからも、この調子で郵便が届く度に、電話が鳴る度に、自分は瑠美からの何らかのアクションに怯えながら過ごさねばならないのだろうか?
自分の犯した事への罪悪感が際立ってきた。

ふと、佑志は今、どう過ごしているのだろう?と過った。
それまで、自分の身に降りかかってきた事に心を囚われていた。
佑志に会いたい…今更ながらに思った。

〜◆〜

瑠美が川崎電設に帰ると、社長室の応接ソファに佑志が神妙に腰を掛けていた。

「あら、こんな所で何をアブラ売ってるの?現場にいなくていいのかしら?貴方は今日から一技術士よ」

瑠美は脱いだコートを椅子の背もたれに掛け、佑志を見向きもせず言い放った。
佑志はソファから立ち上がるもすぐ、床に両膝をついた。

「瑠美…」

名を呼び、そして両手もついて深く頭を下げた。

「すまなかった…!」

「やめてよ。安い土下座なんて見苦しいだけよ。どんな事をしたって私が貴方たちを許す訳がないじゃない」

佑志は何も返さず、頭を伏したままだ。
瑠美は椅子に座り、佑志に顔を向けた。社長席のデスクから見下ろす夫の土下座を、古代遺跡の壁画に描かれた権力者と奴隷みたいだと感じた。

「ほら、立ちなさい。社員が入ってきたら怪しまれるわよ」

佑志はゆっくりと立ち上がり、そしてそのままその場に立ち尽くす。

「よくもそんなオドオドした甲斐性無しの分際で、私を裏切るなんて大それた事が出来たものね」

瑠美は冷たく言った。しかしその言葉と口調は、男としての値打ちを破壊するに充分だった。佑志は何も返さず、俯いたままでいる。

「会ってきたわよ。貴方の愛しい人に。綺麗で品と知性もありそうな人だったわね。さすがに将来を期待されてる美人会計士さんね」

瑠美はデスクに置かれてある、登記に掲載する代表変更の届けに必要な書類に目を通す。留守の間に総務の事務員達が即座に準備してくれていたのだろう。

「まさか、夜には盛りづいたメス猫に変わるなんて、誰も気付かないわよね。さぞ楽しい密会だった事でしょ」

佑志は悔しがっているだろうか。瑠美は佑志の表情を覗こうとしたが、それには佑志の俯きは深すぎた。

「まったく…貴方にもあの女性(ひと)にも舐められたものね。気付かれてないとでも思ってたの?
あの女性には、3日以内に父親に言いなさい、それを踏まえてどう誠意を見せるのか、教えなさいと伝えてきたわ」

壁に掛けられた時計の秒針は、佑志の沈黙をあざ笑うかの様に回り続けている。
瑠美は怒りと呆れ、憎しみの感情が渦巻きつつも、かつては自分も愛し結婚までした男である。少しばかりの哀れみが噴出を止めていた。
愛は…裏切りによってこうも回転扉のように憎しみに変わるのかと、己の中に眠っていた般若の覚醒を感じている。

「いつまでそうやって黙りこんでるのかしら。第一さ、そうやって謝り続けて貴方は、私にどうして欲しいと思っているのよ」

佑志は一呼吸ついて静かに口を開いた。

「悪いのは……すべて俺だ…」

「だから?だから何?俺を社長に戻せとでも?それともあの女性を追い詰めるなとでも?」

再び口を塞いだ佑志に、麻友子は追い討ちをかけた。

「私はけして許さないと言ってるの。
法的にもね、離婚はしなくても私は貴方からも慰謝料は請求出来るのよ。でもそんな事、家計の中でお金が右から左へ移動するだけの事よね?
貴方にはこのまま奴隷のように働き続け、そしてあの女性にはこの上ない苦痛を与える事でしか、私の心を晴らす術はないじゃない?」

話しながら瑠美の心に小さな炎がまた灯った。
バッグからスマホを取り出し、既に夫の履歴から調べ上げている麻友子の番号にかける。
コールは8回ほど鳴った。ようやく通話の画面に変わった。

「もしもし?麻友子さん?先程はどうもありがとうね」

佑志は顔を上げない。瑠美の苛立ちは絶頂に達した。この2人が快楽の絶頂なら、自分は憎悪の絶頂に。息をつく間もない程その波が押し寄せたのなら、その報いの波も息をつく間も与えまい。

「驚かせてごめんなさいね。貴方の番号は既に夫から調べてたから。
あのね、今、ここに夫もいるんだけど、貴方に3日の猶予を与えたと言ったらね、夫が…明日中まででいいんじゃないか?って言うのよ。
私も時間を与え過ぎかなぁと思ってたんだけど、夫がそう言ってくれたから、これで私も安心して気を変えられたわ。
考えればそうよね、何もそこまで私が優しくする必要もなかったわね?」

ふーと息を吐いた。

「とゆうわけで…3日以内の期限は明日の夜までに変更する様に頼むわね。それでは…」

瑠美が通話を切ると、佑志は驚きと困惑、戦慄の表情で瑠美を凝視していた。佑志とようやく視線が合った。
これよ。私の見たかった貴方の表情は。

〜◆〜

電話を切ってから、麻友子はもう仕事に手を付けられる状態ではなかった。

佑志が…まさか、本当にそんな事を。
いや、彼が言う筈もない。あの場にいたなんて嘘だ。これも彼女によるフィクションだ。
でも、もし本当だとすれば…頭の中で否定した。彼が言う筈はない。

佑志に会いたくなった。

そして何より、父・達郎が外出からいつ帰ってくるかと思えば気が気でならない。

内容証明郵便は考え過ぎだった、と胸を撫で下ろした直後の瑠美からの電話だった。

佑志と甘いひと時を交わした夜から2日と経っていない。まだ地獄の門が開いただけだ。

「加藤君、ごめんなさい。ちょっと私、気分がすぐれないの。申し訳ないけど、早退させてもらいたいの。病院に行かせて」

「え…大丈夫ですか? 3月はただでさえ年度末のクライアントも多くて、体調管理は気をつけてって言ってたのは社長の方ですよー」

「わかってる。だからこそよ。月末に向けてますます佳境に入った時に倒れたら、もっと元も子も無いでしょ?ホントに…ごめんなさい」

「ちょっと!大丈夫ですか?本当に!顔色悪いですよ、社長!
わかりましたよ、後は前社長には伝えておきますから、早く帰って養生して下さい!」

達郎から逃げようとしてついた嘘だった。さっそく嘘に嘘を塗り固め出していた。
佑志の事も瑠美の事も考えた。自分がどうすべきかも考えた。考えているうちに、仮病は現実を連れてくるようで本当に体調が崩れ出した。

「父には自分で電話しておくわ」

明日夜まで…
自分は本当に父・達郎に言えるだろうか?
常に仕事に、経営に、顧客からの信頼に応える事に厳格な、心から尊敬する父親。いや、それは経営者としての一面だ。

父親としては思春期には家庭もかえりみず、人並みに反抗していた事もある。それでも娘が公認会計士の資格を取った時には、これまで見せた事もない喜びを全身で表して祝福し、離婚して戻ってきた時には「俺のそばで仕事に打ち込め。この会社を一緒に盛り上げろ」と、帰る場所を作ってくれた。
父親としての深い愛を知った事で、人格者として見直した。やはりそこにも尊敬しかなかった。

言うのか?言えるのか?自問は止まない。
お父さん、私は貴方を裏切っていたと、果たして自分はどんな顔をして言うのか?言えるのか?
とうとう目眩が襲ってきた。

「ちょっと!社長!タクシー呼びましょうか!?」

ふらついた麻友子を見て、加藤が隣の事務室にいる横沢に声を張り上げる。

「大丈夫よ」

麻友子はたまらずデスクにもう一度座った。
中指と親指の先で両こめかみを抑え、そのまま目蓋を閉じ、顔全体を手のひらで覆った。

「少し落ち着けば1人で帰れるわ」

溢れくる目眩の闇の中、ふと佑志に手紙を書こうと思いついた。先程の瑠美からの電話でわかった事は、おそらく佑志は今日は現場ではなく社内にいるのであろうという事だった。
スマホによる連絡も、佑志の会社への連絡も道は閉ざされた。よもやこのデジタル・インフラの時代に、こんな形で遠き過去の学生時代に、当時の恋人と交わした文通じみた手段に頼ろうとは。

「そうだ、一つ大事な連絡があったわ。それだけはやらなきゃ」
麻友子は一人ごちた。

【私との関係が奥さんに知られ、佑志さんも苦しい立場にいるでしょう。私が奥さんと会った事も聞いてるかと思います。
スマホも取り上げられ、佑志さんの会社に私から連絡を入れる事も禁じられた事も奥さんに言われました。

お願い。少しでも会って話したい。せめて電話だけでも。
私の番号は、スマホに入れて覚えてなかった時の為、記しておきます。

090-○○○○-○○○○ 

何とか出先で公衆電話を見つけて、連絡をもらえない? 
お願いします。

麻友子】

ルーズリーフを便箋代わりに、簡単に書き上げて封筒に差し込み糊付けをする。
後はこの手紙を、どうやって佑志に渡るようにするかだ。
こればかりはどうにか加藤の協力を乞えないかを考えた。確かに今は取り掛からねばならない作業が押し寄せている時期だ。加藤は普段、明るくユーモアに富む男であるが、仕事となるととても合理的で効率化を重く考える。
よほど納得する大義名分が無ければ、彼は余計な作業の割り込みを嫌うだろう。今は加藤の作業を大幅に邪魔する事は大いに自覚している。ましてや麻友子の個人的な事情でなど、達郎が知れば職権濫用だ、背任だと激しく怒るだろう。
しかし背に腹を変えられない程に、麻友子の倫理観は砕けていた。
倫理観…そもそも不倫の蜜の味を求めた時に、既に壊れているのだ。

「加藤君、帰る前に話を聞いて。川崎さんトコはそういう事で、貴方ご指名で担当が決まった以上、すぐご挨拶に伺っておくべきよ。父も必ずそう言うわ」

加藤のデスクに歩み寄り、瞬間的にそう説き伏せた。加藤の性格なら、なるべくシンプルな作戦で動かした方がいい。

「えー!?今日ですか!?」

「そうよ。何事も迅速な事は大事な事でしょ?」

達郎の行動方針を言えば、加藤も文句を出さずに従うだろうと賭けた。それは的中する。

「わかりましたよ。今日のタスクは明日以降に先送りされますよ。それより早く、社長も帰って休んで下さいよ。僕も明日からは社長に協力求める事あるかもしれませんからね」

明日…明日から本格的な修羅場になりそうなのだ。加藤に言われるまでもなく、日常を取り戻し仕事に没頭したい。
その為にも一刻も早く佑志と連絡を取りたい。気は早った。

「あ…それとね」

封筒を出して加藤へ渡した。

「これをね、川島さんの常務へ渡して欲しいの」

「川島さんに!?」

「そうよ。そこでね、くれぐれも他の事務員さんや社長さんに見つからないように、常務さんにだけ渡して欲しいの。理由は…後で説明するわ」

「わかりました。わかりましたよ!とにかく!社長はもう早く帰って休んでて下さい。僕も急いで行動しますから!」

席を立ち上がるでもなく、片手で封筒を受け取る加藤の面倒そうな態度に苛立ちが立ち込めていた。

「本当にあれこれ、頼んで申し訳ない。必ず今夜中に体調を整えるわ」

「はい、社長。渡しておきますから、病院に行って安静にしてて下さいね!」

加藤もまた外出の準備を始める。そしてそれよりも先に麻友子が事務所を後にした。

父親の携帯へ電話をかける。本当に心が重かった。携帯は留守番電話だった。

「社長。麻友子です。実はひどい目眩と頭痛で体調がすぐれません。加藤君と横沢さんに後の事は任せて、今日の所は早退させて頂きます。
この繁忙期に、体調管理面で迷惑かけてホントにごめんなさい」

留守電を聞いて父親は折り返してくるだろう。その時を思うと心の重い会話は、ほんの少し先送りされたに過ぎない。
出来る事なら、加藤が佑志に手紙を渡す事を信じて、彼からの電話を待ち遠しがった。

麻友子の早退した数分後、加藤も続いて事務所を出る所だった。

「横沢さん、ちょっと急に外出する事になって…出かけてくるね」

「あら?今度はどこへ?」

「麻友子社長の命令ですよ。川崎電設さんへ新任挨拶回りと、あと、何かは知らないけど…川島モータースさんに手紙を届けて欲しいんだって。郵送でない事考えると、余程の急ぎの案件じゃないの〜?」

加藤は室内スリッパを脱いで革靴を履いた。

「まったく…川崎さんと川島さん。おなじ「川」でも、別々の川岸みたいじゃんね。見事に反対方向だよ」

加藤との会話の中で、気が早る麻友子は自分が「川崎」と「川島」を言い間違えてる事など気付かずにいる。
加藤もまた、麻友子が今日の川島社長との昼食に同席できなかった事へ、先方の常務を巻き込んでお詫びに何かサプライズでも考えてるのか?などと想像している。

ただ、確実に麻友子は「川島」と加藤へ誤って申し送りをしている。
そして佑志からのかかってこぬ電話を待っている。

〜◆〜

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文霊 〜フミダマ〜

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